衒学者の回廊/園丁の言の葉:2004

エアコン考(全然オリジナルじゃない論考)

August 4, 2004
 
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以前、エアコンの“効かせ方”を巡って職場の同僚と対立をしたことがある。どうもオフィスの一部には非常に暑くなる場所があるらしく(あるいは、本人が単に暑がりのせいか)、エアコンの効きすぎを何度訴えても、そいつは周囲に断りもせずに勝手にエアコンの温度を低めに低めに設定するのである。そのために女性ワーカーやエアコンの真下にいる人は、「涼しい」を通り越して「冷え」に苦しむことになる。そして首が痛いとか肩こりが出たりとかが言われる。(ま、女性諸君がエアコンの下で肩や背中が大胆に露出するような薄着を、当然のようにしているというのもどうかと思うんだけどね。)私自身は十分な暑がりだし途方もない汗かきだから、夏は苦しい季節だ。しかし、エアコンの効きすぎはそれ以上に忌避する。

夏が暑いのは自然の道理だが、エアコンで冷やしすぎるのは人間の作為である。夏にだれかが暑くて苦しんでも誰に苦情を言う道理もないが、エアコンの冷えに苦しむ方には人に苦情を言う道理がある。極言すれば、日本で夏暑くて死ぬ人はいないが、間接的にエアコンで冷えすぎて死ぬ人はいる(と思う)。もちろん、世界的に見れば異常気象で「熱波」で死ぬような人はたまに出るが、ここでしているのはそういう異常気象時の話ではない。

現に、今回オフィスのエアコンが壊れて数日大変暑い思いをしたが、それでも誰にも「実害」はなかった。ま、暑いから不機嫌になったり作業効率が落ちたり、ということはあったかも知れない。でも暑くて作業効率が落ちるなんてコトは自然の理なんだから、暑い盛りは全体でちょっと仕事をスローダウンすればよいわけだ。体調に関して言えば、夏に寒すぎると、直ちに健康被害が自覚される。だが、夏暑くて健康が損なわれるということはないだろう。その辺を理解せず、取り敢えずエアコンを効かせた状態が「先天的に正常」であるという思い込みが多くの人にある。

東京で一斉にエアコンを止めたらいい、と言う主張を聞いたことがある。実は、これには興味がある。実際問題、エアコンをみんなが使うから室外機から噴射される熱風のために都心の外気温は上がっている。だったらエアコンを止めればそれだけで外気温を下げることになるわけだ。確かに、人工的に作られている都市の環境は、郊外や農村とはもはや違うかも知れない。だが、都市部でエアコンを止めたときに何が起こるのかを見るためにも、一度そういう実験をしてみたら良いんじゃないかと思ったりするのである。

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