衒学者の回廊/園丁の帰国直後の言の葉:1994-1999

日本経済新聞のコラム『春秋』1999年5月17日付(参照文)

May 17, 1999
 
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▼環境問題の取材で地方の自治体へよくでかける。清掃センターなどを案内してもらう車は、最近はハイブリッド車が多い。静岡県下のある市長は、当選と同時に公用車を大型車からハイブリッド車に代えた。運転手から小型だと安全上困ると苦情を言われたが、環境配慮車に乗っている気分は、格別だとか。

▼燃費効率の良い車に乗ることで、環境にささやかながら貢献しているという気持ちを持つのは結構なことだ。運輸省は、燃費効率のよい車の税率を軽くし、逆に悪い車を重くし、環境配慮型の車の普及を図ろうとグリーン税制の導入を検討中だ。

▼趣旨は賛成だが、この種の燃費効率のよい車を、低燃費車と呼ぶのはどうもいただけない。広辞苑によると、燃費とは、「1リットルの燃料で車が何キロメートル走れるかを示す燃費消費率」とある。だから低燃費車とは、燃費効率(消費率)の悪い車という意味になってしまう。やはり燃費効率のよい車は、高燃費車とでも呼ぶべきではないか。

▼ある役所に問い合わせたところ、「これまでの慣例で、他の役所も使っているから」という答えだった。CO2(二酸化炭素)の排出量を抑えるため、燃費効率のよい車の開発が自動車メーカーの命運を決めるとまでいわれている。グリーン税制の導入もそうした流れのなかで検討されている。目的はよしだが、呼称が誤解を招くようでは困る。この際、過去の慣例などにこだわらず、「低」を「高」に変えてみたらどうか。

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