衒学者の回廊/園丁の今の言の葉

あなた達政府が同罪であるということは、あなた達が証明する

September 21, 2001
 
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「テロを起こす動機を持ったり、テロリストに対する同情を持ったりしただけで、テロを実際に起こした者と同罪であり、報復の対象であるに相応しい」などという理屈が主張できるのであれば、合州国政府よ、いかなる引き金や理由があったにせよ、他国における戦争や地域紛争を望んでいた合州国内の権力者や、紛争によって利益を得る者や、それを夢見ただけの者、そしてその家族やその人達を匿うあらゆる人、あるいは知らずに匿っている友人達が、テロリストと同罪と呼ばれなければならない。そうした一切の者を合州国内からも探しだし、これからあなた方政府が他国に与えるのと同じ痛みを、その者達にももたらすことを約束しなければならない。

それができない、その者達を私たちの元に引き出せない、とあなた方は言うのなら、「合州国政府や戦争を望む兵器産業ばかりか全ての合州国民達も同罪」という論法が世界各地で大手を揮うであろう。

あなた方の国の中で莫大なる富と既得権によって守られている匿名のあらゆる支配者達は、あなた達が自分で裁かなくてはならない。そいつらを白日の下に晒さないと言うのであれば、そうした支配者階級によって支配されている眠れる「善良なる市民」達を巻き添えにするさらなるテロを防ぐ手だてはなくなるだろう。

合州国政府よ。あなた方は途方もない間違いを犯そうとしている。この世に制御可能な戦争などというものはない。戦争はカオスである。There is no such thing as controllable war. War is nothing but chaos. 仮にも、一部の人々が望んだ戦争をあなた方が首尾良く手に入れたと思っているのであれば、それは完全な幻想であるばかりか、人類に対して二度と償うことのできない間違いを犯したのである。そして、あなた方の貧困な想像力を上回る規模の破壊と損失をすでに自国の人々にもたらしつつある。そして、それはさらにあなた方国家に尽くして止まなかった、疑うことのなかった人々を圧迫し続けるであろう。

現にいくつかの情報筋から漏れている、あるいは目撃された新聞報道にもあるように、あなた方(の一部)がすでに予測していたにもかかわらず、この事態が起こるのを防がなかったばかりか、起こる一部始終を静観していたのだとすれば、あなた方こそが、自国の人々やあなたの国で働く世界中の人々を危険に曝したのである。その場合、それに対する言い訳は一切が無効である。一方、あなた方が、このような事態が起こることを何も知らなかったと言うのであれば、それはあなた方の情報収集能力と国民を守る能力が根本から問われる事態であろう。だからあなた方は「知っていた」とも「知らなかった」とも言うことが出来ないのである。

アメリカ合州国政府よ、「あなた方への協力を躊躇すると言うことが、あなた方に敵対することを意味する」と単純に言い切れるのであれば、私の周りにいる米国出身の友人達は、皆あなたの国においては、反逆罪であろう。どう考えても、あなた方こそが冷静さを失っている。「敵対」する自国民をひとり残らず試みに遭わせて裁くことができるのか。こうした、あなた達政府のやり方に疑問を持つ人々は、すでに多く現れているのであり声を上げつつある。戦争が起こるより前に、既に厭戦気分甚だしいことを知るべきである。

残念ながら、あなた方はこの戦争を闘い抜くことなど出来ない。なぜならあなた方が攻撃しようと言う相手にこそ、国防と民族の存亡へのより強い動機と信念があるからである。そして、彼らはあなた方と違って死そのものを畏れていない。あなた方合州国政府は、死を畏れぬ相手をどのようにして支配しようと言うのか。彼らのひとり残らずを地上から殲滅するまで殺戮の限りを尽くすと言っているのと等しいではないか。

そして、これは世界中の人がこのように思っていると言っておこう。世界を巻き込む行動に出るに当たり、証拠を見せずに「証拠を持っている」と言うだけで世界が納得するはずがない、ということをだ。あなたがそのようなことを主張できるのであれば、私は、「あのテロ行為が日本に出現しつつある新興の反米ナショナリスト達による犯行であったという証拠を持っている」と言うこともできる。誰にでもできる。あるいは、「中国国内で弾圧を受けているのに、米国政府に助けて貰えない気功団体“法輪功”内の恨みを持った過激派のせいであった証拠を持っている」とも、はたまた「アメリカ国内の反政府勢力が自らやった証拠を持っている」とさえ言えるのである。そこまであなた方に正義があると言えるのであれば、今すぐ自分たちの証拠とそれが正しいことを万国の人々が分かる形で示し給え。それを出来ずに、単に「報復」攻撃を開始するというのであれば、やはりあなた方政府こそが、だれより戦争を望んでいたことを明確にするであろう。

そして、とりわけその戦争が、あなた方が勝てぬ種類のモノであるにもかかわらず、かつてヴェトナムにおいてしたように、あえて履行するというのであれば、それは、戦争を望むあなた方の国の、極一部の人の意向を反映したモノでしかないことを如実にするのである。あなた方は、まず、自国の人々をそうして傷つけているのである。


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